Q: 包丁屋さんが奨めるいい包丁とは?
A: 毎日使っていても刃こぼれしにくく、曲がらず、長切れする包丁です。 さら
に、研いでいると砥石に吸い込まれ、食いついてくるような感触がある包丁、これは
言い替えれば砥石乗りのいい包丁ということなんですが、こういう包丁はかえり刃に
粘りがあります。
Q: 本焼きか霞(かすみ)か、選ぶ時にどう考えたらいいでしょうか?
A: それぞれの長所を持っていますから一概には言えませんが、どちらも同じ鋼材を
使って、鍛造工程、焼入れ工程がきちんとされていれば、刃の硬度も切れ味もあまり
遜色ないかと思います。
ただし、本焼きは切った時の刃離れがよく弾力性に優れ、刺身を引いた時の切断面の
つやがいいと言われます。難点は、本体が全部鋼でできているので、荒っぽい使い方
や空研ぎ(ほとんど水をかけないで研ぐ)をすると、切刃部分に刃割れ(亀裂)が入
ることがあります。取り扱いに慎重さが必要で、中級上級者向きです。日本刀と同じ
ように一丁ずつを焼き入れして造るため大量生産ができず、高価なものになります。
一方の霞の刃部の弾力性は本焼きにくらべると劣るが、刃欠けも表刃の研ぎ出
した鋼部分で止まり、補正しやすく研ぎやすく使い勝手のよい実用的な包丁です。ど
ちらを選ぶかは、ご自身の技量にもよりますが、霞を自在に使いこなしてから本
焼きを求め、それぞれの長所を生かし、必要に応じて併用されるとよいと思います。
Q: よく「青鋼がいい」とか「いや白鋼だ」と鋼を指定して買う事については?
A: 高級な鋼を使っているからといって、よい包丁とは限りません。高級素材を使っ
ていても皆同じように美味しい料理ができるとは限らないのと同じで、鍛治師が鋼の
性質をいかに熟知し、焼入れの技量にいかに優れているかで決まってしまうのです。
たとえば、青二鋼も白二鋼も含まれる炭素量は同じですから硬度は変わりありませ
ん。しかし青二鋼は、焼き入れ性のよくなるクロームと耐磨耗性の増すタングステンを添
加した合金鋼で、高価格だが焼き入れ性がよく、耐久性のある包丁になります。とこ
ろが白二鋼は合金成分が含まれていない分焼入れがむずかしく、技量の優劣が包丁に
出てしまうが、よい焼刃はカミソリのような刃味の包丁になるのです。
Q: 「よい包丁は?」と聞くと「高い包丁!」と即答されることがありますが、どの
ランクを選べばよいのですか?
A: ランク以前に、ご自身がどの場面でその包丁を使うかを考えなければいけませ
ん。たとえば料理場が狭く、刺身を引くまな板の奥行きが短めなら、その寸法以内の
刺身包丁が使いやすいとか、カウンター仕事では包丁さばきは一つの見せ場ですか
ら、優雅にさばくところを見せるためにも少し長めの包丁がよいとか、長さ一つでも
選ぶ視点がいろいろあります。
価格の問題は各包丁店によって差がありますが、私は初級者の方には、少し背伸びを
してもご自身の思っているものより一ランク上をお奨めしています。
最初にきちんと下研ぎされたよりよい包丁を買う事で、研ぎやすさ、切れ味のよさを
身体に憶え込ませる。それが一つの基準になって、包丁の善し悪し、言い替えれば本
物を見抜く目、すなわち鑑識眼を養うことができます。高いようでも結果的にはよい
ものを安く買ったことになるのです。そのためには、包丁の選び方、研ぎ方のアドバ
イスやアフターケアもきっちりしてくれる包丁屋と信頼関係をもつことが一番だと思
います。